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医療倫理・プロフェッショナリズム

 

樋野興夫先生『がん哲学~コロナ時代の哲学~』

順天堂大学名誉教授の樋野興夫先生に島根県までお越しいただきまして、『がん哲学』のお話を拝聴いたしました。
樋野先生はもともと病理学の先生で病理学の分野で多数論文を書かれているのですが、諸事情、諸経緯があってがん哲学外来を開設され、それに関する書籍も多数出版されています。また、島根のご出身であることが関係していると思いますが、かなり以前から本学でのご講義を頂いており、大変ありがたいことであります。

書籍も読ませていただいたのですが、病理学者だからこそ見える視点もあり、そしてずいぶん前から患者さんの「傾聴」を続けてこられた深み、凄みを感じますし、そのエッセンスを飾らずに語っていただいた授業でした。もう少し上の学年になってから、改めて聴いて欲しいなあ、と思いました。樋野先生、いつも本当にありがとうございます!

加藤寛幸先生講義「人道援助活動について」

先日は本学医学科・看護学科の1年生に対する「倫理プロフェッショナリズム」講義に、元国境なき医師団会長の加藤寛幸先生に島根までお越しいただきました。加藤先生は島根大学のご出身ということで、国立大学の非常に制約のある中、講義をしていただくという大変申し訳なくありがたい機会を毎年いただいております。

昨年の講義では学生さんに各々発表をしてもらうというアクティブ型でされていましたが、今年は動画であったり、先生のお話であったりを承る形が中心になりました。とはいえ、必ずしもアクティブ型でなくても、お話の内容次第では学生さんの心に響くのだなあ、と感想を眺めていて思いました。

どうしても国境なき医師団の立ち位置的にも、なさっている活動からも、やはり世界情勢 紛争であったりそういったことに関するお話が多くなります。医師、看護師といえども、医療だけではなくそういった情勢に対しても関心を持つべきであるし、全く自分には関係ないとシャットアウトしてしまうのは違うと思います。

授業後何人かの学生さんが国境なき医師団に参加したいと思っているが、どうしたらいいだろうか、みたいなことを聴きに来られていましたが、参加するしないに関わらずこういったことに関心を持っておくということは大切なことだと思いました。

本当に貴重な機会をいただきまして、加藤先生には深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます 。

岡部正隆先生『色覚の多様性とカラーユニバーサルデザイン~色覚が異なる人たちへの配慮と工夫』

東京慈恵会医科大学副学長・解剖学講座教授、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)代表も務めておられる、岡部正隆先生に島根までお越しいただき、医療倫理・プロフェッショナリズムの講義として『色覚の多様性とカラーユニバーサルデザイン~色覚が異なる人たちへの配慮と工夫』というお話を頂きました。

まず初めに学生の耳目を惹く一言があり、そこで空気を掴まれた後は岡部先生ワールドといいますか、私もすっかりお話に惹き込まれました。色覚検査は史上最大の遺伝的差別である、というお話から、色覚の「異常」であったり「色弱」であったりという言葉を使うことで、色々差別というか そういった意識につながるということを強調されていました。ではどのような言葉を使うのか。

色弱というのはあくまで「感覚の多様性の一つ」であって、この色が見えにくいという一つの個性になりますから、現在では正常色覚のことをC型色覚、そしてある錐体の異常によって起こる色覚をP型、D型色覚などと呼称するということになっています。

そしてP型・D型色覚の人には果たして世の中の色がどう見えているか、というのを体験できるアプリもご紹介いただきましたし、スライドやハンドアウトによって「こんな風に見えるのだ」ということを実感させていただきました。その機序も色を認識する錐体の特徴によって見え方が異なるということが分かり、理解が深まりました。P型・D型色覚の人にとって見分けにくい色の組み合わせも教えていただきましたので、これも今後意識していきたいと思います。

実は少し前から、スライドを作る上でユニバーサルデザインを意識しましょう、ということで使うべき色というものを認識していたわけですが、実際にこう見えるのだということを教えていただいてその心が大変よく理解できました。色覚検査表も実際に見てみて、このように見えるのだということがよくわかりました。なんとなく知っているのと、体験するのとではずいぶんと解像度が違うのですね。

あくまで色覚の個性というのはあくまで個性であって、特別な配慮を必ずしも必要とするわけでもない、ということで、これが異常という言葉を使うと差別とかいうことになるとこれはこれでやっぱりよろしくない。ただそういう方でも認識できるような色の使い方を普段から意識する、こういったことが重要だなと思いました。

赤はわかりにくいけど朱色ならOkということは、今回見え方を教えていただくことで非常によく分かりました。このようなお話を時間通りにきっちり終わっていただいて、非常にわかりやすく、多くの事例を挙げながら学生さんに説明していただいて、この領域に関する理解が深まったと思います。岡部先生に来ていただいてお話を拝聴できる学生さんは幸せだなと思いました。岡部先生、わざわざお越しいただき、お話いただき本当にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

渡部沙織先生講義「レアディジーズ(希少疾患)の社会学 ~医療政策、患者・市民参画、ELSI、医療の多面性を捉えるために~」

東京大学医化学研究所 公共政策研究分野の特任研究員 渡部沙織先生に、医療倫理・プロフェッショナリズムの講義「レアディジーズ(希少疾患)の社会学 ~医療政策、患者・市民参画、ELSI、医療の多面性を捉えるために~」という講義を賜りましたので、ご報告いたします。

渡部先生は元々途上国開発支援畑で研究・活動をされていたのですが、その後医療社会学畑に移られて活動をされています。そのきっかけとなる出来事について、別途書籍を出版されています。

今回はその体験談……ではなく、しっかりと社会科学の研究についてお話をいただきました。まず医学と社会科学の違いとして、対象としているものの違い、そして医学は他の人体のへ適用が容易ですが社会科学は研究結果を他の社会に適用することが困難であろうこと、などの基本的な違いを分かりやすく説明していただきました。

2019年ノーベル経済学賞受賞者のエスター・デュフロ氏による「貧困に立ち向かう社会的実験」TED講演の動画を供覧いただき、社会的な実験の手法についてわかりやすい例を見せていただきました。社会学の手法と対象を例示いただき、ELSI(Ethical, Legal and Social Implications)が現在の科学研究にとって必要不可欠な視点になることも教えていただきました。

またヒトゲノム解析が容易になった現代で、遺伝学的情報に基づく差別が行われるようになったということも実例を交えて示していただきました。

生命倫理・研究倫理の歴史には科学黎明期における天然痘や華岡青洲の話、黄熱病やナチスの人体実験の話、タスキギー事件などに触れられて、特にこの部分で学生さんから衝撃を受けたという感想を多数いただきました。

最後に患者・市民参画について、これからの医学研究には必ず必要なものであるといったお話をこちらも具体例を挙げ、大変分かりやすく教えていただきました。

渡部先生、なかなか学生さんが聴く機会のないお話を頂きましてありがとうございました!今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!!

原 正彦先生講義「医療の社会実装と産学連携活動」

昨日は、株式会社mediVRの代表取締役社長 原 正彦先生に、医療倫理・プロフェッショナリズムの講義として「医療の社会実装と産学連携活動」と題したお話を賜りましたのでご報告いたします。

まず一体なんでこんなすごい方が島根大学に来てくださるのか?といいますと、原先生は島根大学ご卒業(24期:救急医学講座のI先生と同期)ということで、これまでも多くの卒業生の方が来ていただいておりますが、1年生諸君はそのありがたみを痛感していただきたいと思います。

頂いたお話としては、まず医療倫理・プロフェッショナリズムのコースとしての学習到達目標として、医療の社会実装、それから産学連携活動について概要をお話いただきました。

次にその実例として、mediVR社さんが開発・実用化された、仮想現実技術を用いた機器(カグラ)の説明とその実際を紹介した動画見せていただきました。私自身不勉強で、この機器については存じ上げておりませんでしたが、お話を聞くと大変夢と希望に満ち溢れた機器でございます。詳しくは同社のホームページをご覧いただければと思います⇒https://www.medivr.jp/

それから、医療の社会実装と産学連携活動を考える上で切っても切れない、研究不正と利益相反マネジメントについての定義のお話、そして具体例としてiPS細胞のお話をしていただきました。いろいろなかなか難しい……。

それから学生時代に知っておくべき考え方として、1.思考停止に陥らないこと、教科書を信じないこと2.能力=知識×経験3.レジリエンスについての説明を頂き、最後の実例として実用化間近の「人工呼吸器用のマスク」についてご紹介いただき、最後に今後の展望という順番でした。100分間、最初から最後までずっと夢のあるお話で、大いに刺激を受けた学生さんも多かったのではないでしょうか。私も大いに刺激を受け、起業したくなりました。

原先生におかれましては、大変ご多忙の中、島根までお越しいただき、本学医学科・看護学科の1年生に対する「倫理プロフェッショナリズム」講義を頂きました。誠にありがとうございました!今後とも何卒よろしくお願い申し上げます!!

小林只先生講義「日本の未来、あなたの未来。今、社会が求めるジンザイとは?〜知財⽴国宣⾔から20年を経て〜」

この水曜日は、弘前大学医学研究科 総合地域医療推進学講座 講師・株式会社 アカデミア研究開発支援 代表取締役社長 小林只先生に、医療倫理・プロフェッショナリズムの講義として「日本の未来、あなたの未来。今、社会が求めるジンザイとは?」と題したお話を賜りましたのでご報告いたします。

まず先週の原先生に引き続き、一体なんでこんなすごい方が島根大学に来てくださるのか?といいますと、小林先生は原先生と同じく島根大学ご卒業(27期、原先生は軽音の先輩)ということで、これまでも多くの卒業生の方が来ていただいておりますが、1年生諸君はそのありがたみを痛感していただきたいと思います。

知財に関する話、という触れ込みだったのですが、実際の講義は100分余に渡る若者への熱い熱いメッセージ、という感じでした。なお、タイトルの「ジンザイ」がカタカナなのは、人材なのか、人財なのか、人罪なのか、それとも人在なのか、どうなりますか?という問いかけでありました。

まずはこれまでのキャリアについて、隠岐島前病院で白石先生に地域医療、総合診療の手ほどきを受けられ、総合診療医としてのキャリアを積まれる中で、現場からのアイデアを次々と具体化して製品化され、さらに必要な知財管理の資格を取られた、というお話をサラッとされたのですが、それだけでもものすごい活動量、勉強量であることが窺われました。

アイデアを形にして製品化し世に出す、という過程には深くて遠いギャップがあります。それを超えるために色々な方のサポートを受けた、というところで挙がったお名前もとんでもなく、ただただ圧倒されるばかりでしたが、成功モデルは地方から、東京からは出ない、というお言葉には勇気をもらえました。

以降は備忘のためにメモしたことを箇条書きでご紹介したいと思います。

ポケットエコーにまつわるステークホルダー調整のお話も生々しく、またギャップの具体例も教えていただきました。

大学発ベンチャー企業の数は増えているが質に課題がある件、資本政策ミスの実例。

知財に含まれる知的財産はブランド、ノウハウなど、それで信用されるもの。

特許法の理念 発明を奨励するためのもの 1条 目的 これが大事。

医療界のビジネスモデルの変化、ということで健康であるほどみんながHappyになるモデルは可能か?というところで、テクノロジーの発展によって個別化/自己診断ーセルフケアの方向に進むでしょうというお話 

パラダイムに関するお話 新しいパラダイムの受容には、わかりやすい概念の「発明」が必要であるというお話はなるほどと頷かされました。

神話を語れなくなった民族は100年で滅びる。

文明のサイクルは紀元前から800年周期で東洋優位ー西洋優位との入れ替わりがある。これまでは食糧の不足に起因する民族大移動が契機であった。今はちょうどその時期に差し掛かっており、中東での紛争はその端緒である可能性がある。

西洋医学の部分観、東洋医学の全体観、ペルシア医学や中医学など多量に勉強した。

データが大衆化することで、存在、信頼といったものが価値になる。

日本人は0から1を生み出すのは苦手だが、加工、すり合わせは得意。外来語があったり造語があったりするのは日本語の特徴。あだ名 も知財である、創造性が高い。日本仏教も独自の進化があった。

SDGsは米中に勝てない、と悟った欧州がルールを変えたもの。

宗教の目的は赦す。道徳や倫理の目的は裁く。倫理とは専門家が対外的に示す規律である 非専門家に対してどれだけ誠実であるかを見せるためのもの。欧州はその倫理をうまく使っている。

定義の作り方も目的次第である。定義付けは共通認識を作る行為で、プロの定義だと立場によって言うことが違う。

Take home message:どれほど知識や能力が高くても、本気の人には叶わない。

まさに最後のお言葉通り、本気、火の玉のように熱意のこもった講義、100分を超えましたが、体感はごく短時間、あっという間のお話でした!小林先生、本当にありがとうございました!学生さんより私が刺激を頂いちゃった感じです笑。

 

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